◯美術評論家 鷹見 明彦(1998年 個展DM 於、ガレリア  ラセン)

    

 不意に暗がりに遭遇したときのように一瞬瞳孔をひらかせる暗色のフィールドペインティング。モノクロームに見える画面は筆致の痕跡を慎重に消沈させながら、複数の色彩を幾度も塗り重ねた励行の賜物である。アド・ラインハートの到着点を一つの指標として、絵画の特質をそのマチエールに覆われた平面性にミニマルに還元する地点に置く工藤の作品は、モダニズムまでの絵画史を踏まえて厳粛なフィールドの裡に温かな色彩に光と調律の肌理(きめ)を匿している。すべてが足早に過ぎる時代の淵で、それは最も遅延しながらゆっくりとした積層をとおして、もっとも遠く深いところへとどこうとするカノンの響きに親和する。                                              

 

REIJIRO KUDO       工藤 礼二郎